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アトリエ欅の考える「銘木」とは

銘木の定義

 

銘木 と書いて「めいぼく」と読む。

良い木材をそう呼ぶ。

 

良い木材とは何か。

 

木の板には 木目(もくめ) がある。

年輪の表出を指す語で、これが複雑な表情を見せることがある。

杢(もく)という。

ケヤキの玉杢(たまもく)、トチの縮み杢(ちぢみもく)、などがそれにあたる。

杢のある材は珍しく、これらは銘木である。

 

木目とは別に、材色のコントラストを愛でる銘木もある。

イチイの芯材は赤く、辺材の白との対比が美しい。

エンジュの芯材は焦げ茶色で、やはり辺材の白が映える。

 

また、シルエットをもってその価値が認められるということもある。

変木(へんぼく)の柱は細丸太をそのまま用いるものであり、木目は見えないが姿はおもしろく、目を楽しませてくれる。

これも銘木である。

 

大きいこともまた、得難いという点でやはり銘木である。

大きな一枚板は当然大木からしか得られず、その樹齢は人の寿命など遠く及ばない。

 

目詰まり(めづまり)の木材も銘木である。

年輪の間隔の狭い木材のことを 目詰まり材 という。

実用的な寸法を得るには、その成長に長い年月を要する。

 

古さも価値である。

そもそも、伐採直後の木は加工に向かない。

材中に大量の水分を含んでいるからだ。

乾燥の過程で 痩せ、反り、割れ、ねじれ を生じる。

製材して数年、時には十年以上、保管し乾燥を待たねばならない。

 

古材(こざい)と呼ばれる木材がある。

古い木造建築が解体されると、その元建築部材たちは古材と呼ばれる。

利点が多い。

まず、確実に乾燥していること。

そして、そもそも良材が吟味されて使われているので、性が良い。

更に、古い道具の痕跡が残り、今となっては得がたい表情を持つ。

また、人為によらない古色を帯びているのも魅力だろう。

 

古材は、初めに使われた当時には、銘木とは呼ばれなかったかもしれない。

しかし時を経て、銘木と呼ぶに足る風格をまとう。

実用に供された時間が、材を育てる。

 

古材になり得る木材を 銘木 と呼びたい。

 

古材になる前にはがれるベニヤは銘木ではない。

木目を写しただけのプリントは銘木ではない。

無垢の木材であることが肝要である。

 

本物だけが時代を超えることができる。

古色は材の内からにじみ出るものと心得たい。

令和5年3月10日

株式会社アトリエ欅 代表取締役 町田至
(令和6年11月30日法人解散)

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